福祉うなぎ、意識高い系元ヒキ

意識が高い元ヒキの福祉従事者がつらつらと

「頼むから障害者作業所の商品買ってくれ」という投稿についてを読みました。

https://anond.hatelabo.jp/20200123025202

これですね。

anond.hatelabo.jp

同様に福祉施設職員である身からしたら痛いほどわかる話題ですので書こうと思います。実のところ、ブックマークコメントでアドバイス頂いていることは福祉側の情報が少ないために惜しいことになっています。

福祉について一般的に知らなそうなこと

商品の売り上げは職員の給料と関係ない

これは元記事の方も書いていましたが、売り上げは全額障害者の方に還元されます。売れても職員には入りませんし、売れなくても職員の給料は公から出ます。逆に売れても職員に関係ない場合が多いですが、公から出るお金頼りでない普通の会社の形なら全員同じにできるでしょう。名古屋の事業所でそういうところがあった気がします。

売上に消費税はかからない

作業所で作ったものにはかかりません。しかし実際には材料費は消費税かかりますから上乗せしてたりしますが……

工賃とは

工賃とは福祉施設の作業のお給料です。普通の給料と違うところは

  • 最低賃金を下回ってもよい
  • 原材料費など必要経費除いて全額を障害者の方に返さなければいけません
  • プールしておくことはできません

お金を稼げるような障害特性について

ネットではときどき話題になりますが「発達障害の人は自分の得意分野では物凄い集中力がある」「知的障害者は芸術が得意(あるいは好き)」という言説を目にします。これはそういう場合も在りますが、まれです。はっきりいいますが、何かと結びつけばすぐお金を稼げる人は少ないと思ってください。たしかにそういう萌芽を感じることはありますが、障害者の方は1人ではありませんし、職員の数は限られています。

福祉は全部やってあげることではない

本来障害者の方ができることまでしてしまうとその人が持っている力まで奪ってしまうことになります。てすが、手助けやフォローはちゃんとします。この加減が難しいんです。

福祉職員について※個人の観測です。

福祉職員はものの売り方やマーケティングを学んできたわけではなく、ものを売りつつ営業をしたり書類を作ったり面接や生活の相談、作業の指導をしたり書類を作ったり書類を作っています。……公からお金をもらっている都合上書類を作っていることは非常に多いです。あと給料は少ないですね。私は手取り180万くらいですが県内の同業ではやや高い方と思います。しかし、福祉を志す人は熱意が強く真面目です。それゆえ進んでサービス残業をする姿をよくみます。あとITスキルが低い傾向があるようでFAXを使うなんて姿は珍しくなくGoogleグループを作ろうとして頓挫した景色は3回は見ました(一回は自分です)。それとこう言っちゃなんですが福祉大学の偏差値は低いせいなのかエビデンスに基づくという姿勢もなかなか難しいです。

元記事へのブックマークコメントに関して

元記事の人はだいぶがんばっている

パティシエやデザイナーが入ってるとかいう時点で施設を特定できるんじゃないでしょうか? かなり珍しいです。ここまでの取り組みをしているのは私の地元では知りません。かなり人口密集地の施設ではないかと思います。たいていの施設は福祉職員が製品のデザインやパッケージを考えています。なのでものすごくダサかったりしますよね。

付加価値をつけたら?

これに関しては、「障害者が作っている」というストーリー以外難しいと私は思っています。どんなにきれい事を言っても健常者の方が生産性はいいのです。健常者は同じ市場で同じもので勝負しても速く正確に長時間労働できるのです。たしかに、私も最初は付加価値をつけよう、同情買いではなくいいものをと思っていました。しかし、障害者施設でうまくいく商売は一般企業がやったらもっとうまくいくわけです。内職についても同様です。

職員の努力不足では?

給料分働いてるだけです。なにをしようが給料が増えるわけではなく、仕事が増えるだけです。やりがいだけで「もっと稼げる作業を!」とやっているわけです。率直に言って、儲かる仕事を見つけたら自分の副業にします。私はそもそも自分の来年の生活すら心配なんです。これを批判する人には「じゃあ、あなたがいいアイデアを無料で提供して儲かるまで道筋つけてね」としか言いようがないです。

じゃあどうすれば?

もう何もわからないです。どうすればいいんでしょうか? うっすらと元記事の方のようなことは考えていましたが容赦ないコメントの前につらくなります。私は大真面目に国が福祉製品を買い上げて全国民に支給して福祉製品を普及させるとかしたらいいんじゃないかと思います。

最後に言いたいこと

私も元施設を利用していた障害者です。いつでもその立場になることがあるだろうなと思っています。病気のせいで体や頭が思うように動かない中で、「やれた」という感覚を積み重ねることが回復につながったり、社会の中で生きている自尊心のために重要ということが骨身にしみて理解できています。そして、職員として福祉の支援をやりながら商売をすることの難しさも感じています。何か現時点で結論が出たとか答えがほしいとかはありませんが、改めて考えるきっかけとなりました。多くの人が福祉製品についてどう思ってるのかも思い出すいい機会となりました。